Sound of Wind Mill

思うまま 感じるまま を そのまま 言の葉や 絵の葉に のせて 気ままに 飛ばしています
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人間パンダ―前書き


この話は、私の友人が実際に見た夢をモデルに書いたものです。

 この小説を、友人Oに捧げます。



  人間パンダ―1 を読む 
      http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-156.html





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人間パンダ―1

のどかな昼下がり。

私は、室内テラスの一角で、テラスに集う人たちを眺めている。

西日がゆったりと背中を暖め、
ウォークマンから流れるケルトミュージックの歌声が耳の中に響いてくる。


ここは、とある精神病院の閉鎖病棟。

食堂のテラスには、面会人と患者が話す姿がちらほら見える。

ここからだと、ナースステーションから、トイレの入り口、
食堂全体まで、隅々まで見渡せる。


“精神病院”。

そう、ここは精神病院。

その証拠に、時々悲鳴に近い叫び声が聞こえたりする。

足取りのおぼつかない老人が、動物園の檻の中の虎の様に
何度も行ったり来たりする。


なぜ、私がここにいるのか。

それは、私が“狂っている”からだ。

いや、本当に狂っている人間は、自分が狂っていることを自覚していないのではないのか。

私が、“自分は狂っている”と自覚した時点で、私は狂人ではないのかもしれない。

むしろ、“狂人”ではないと思いたい。

だが、医者も、看護士も、親も、友人も、上司も、同僚も、
私の周りの人、すべてが、私を“狂人”だと思っている。

世界は、多数決でものごとが決められる。

よって、私は、自分を狂人と言わざるを得ない。


しかし、私は、最初から狂人だったわけではない。

あの日、あの出会いさえなければ、私は
ごく、ごく普通の、平凡な人間として、きっと一生を終えることになっただろう。

あの出会いさえ、なければ・・・。



   人間パンダ―前書き から読む 
     http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html 
   人間パンダ―2 を読む
     http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-157.html






人間パンダ―2

「ねぇ、涼子、ちょっと待ってよぉ!」

「あゆみ、歩くの遅すぎ!!」


二週間前の金曜の午後七時頃、
私は同僚の涼子と共に、退社後の道を駅まで歩いていた。



涼子は、同僚の中で一番の仲良しで、
長いマロンブラウンの髪を毎朝コテで巻き、
つけまつげを欠かさずつけて出勤してくる、
いわゆる、少し派手目のタイプの女性だ。

その毎朝の努力のかいあってか、
彼女は目鼻立ちのはっきりした美人である。

会社でも、やれ経理部の小手川さんとつき合っているだの、
人事の佐野課長と不倫しているだの、
噂にこと欠かない。


それにひきかえ、
自分はと言えば、
特別美人というわけでもなく、
かといって、地味すぎて、暗いとも思われるほどでもなく、
ごく一般的な、普通の二十代後半の女性だった。
そう、ごくごく普通の、平凡なOLだった。
・・・あの日が来るまでは。


その日、私は、涼子に連れられ、
いわゆる、“合コン”に出席することになっていた。

このようなことは、時々ある。

合コン好きの涼子に頼まれ、
人数合わせに呼ばれる。

そのたびに私は、興味のない車の話や、ゴルフの話を聞かされ、
その後、数回メールのやり取りをして終わるという、
一連の流れをたどることになる。

おそらく、今夜もそうなるであろうことが予想された。




  人間パンダ―前置き から読む
     http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html
  人間パンダ―3を読む 
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-158.html




人間パンダ―3

「遅くなってごめんなさぁ~い!」


涼子に続いて、テーブル席に通されると、
すでに席には数人の男性が座っていた。


「残業ついちゃってさ。ゴメンねぇ!」


涼子が話しかけた男性が、おそらく向こう側の幹事なのだろう。

二人でしばらく事務的なやり取りをしていた。

その間に、私は、今回のメンバーを、ざっと見回してみた。

その瞬間、私は、ある男性のところで、視線を釘付けにさせられた。

そのは、一番奥の席に座っていた。


「えっ?!!・・・」


呆然と立ち尽くす私を、涼子がつついた。


「あゆみ、何つっ立ってんの?!
 早く座りなよ!」

「・・・あ、ああ。うん・・・」


せかされるがまま、席に着く。

その間も、私はそのから、視線をはずせずにいた。


「あの・・・?!」





  人間パンダ―前置き から読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html
  人間パンダ―4 を読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-159.html






人間パンダ―4

「あの・・・?!」


私は信じられなかった。

ひたすら見つめ続ける私を尻目に、
そのは悠々と煙草を吸っていた。


「遅れてごめんなさぁい!

 太田産業で総務やってる桐澤涼子です。

 よろしくお願いしまぁす!

 幹事の田端君とは大学のテニスサークルで一緒でしたぁ。」


涼子は一人でさっさと自己紹介を始めている。

そのは涼子の自己紹介をあまり興味なさそうに聞きながら、
煙草の火を、灰皿に押し付けて消した。


「ほら、あゆみ!」

「あ、ああ・・・

 同じく太田産業総務部の宮長あゆみと申します・・・。

 よろしくお願いします。」


せかされるがまま自己紹介をしたものの、心ここにあらずである。

自分が今ここにいるのが、まるで夢の中のように現実感がなく、
感覚を通して入ってくるものすべてが、
偽物のように、するすると上滑りしていく。





  人間パンダ―前置き から読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html
  人間パンダ―5を読む 
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-160.html

  


人間パンダ―5

先ほど涼子と話していた男性が、親しげに話し出す。


「あゆみちゃんだね。よろしくー!

 幹事の田端健司です!

 涼子とは大学時代からのつき合いでさ。

 って言っても、たまに、こうやって飲むくらいだけどさ。」


田端さんが続けるのを、うわの空で反射的にうなづく。



今まで生きてきて、これ以上の衝撃を受けたことがあっただろうか。

まるで悪い夢を見ているようだ。

目の前がくらくらして、床につけている足が、地面の感覚を失いそうになる。



「で、こいつが、俺と同じ会社の木下。」


田端さんに指差された、真ん中の席の男性が、
にこっと笑って話し出す。


「大峰商事、営業の木下翔です! よろしく!

 趣味はボードかな。」


爽やかな笑顔で微笑む。

涼子が、テーブルの下で私の足を蹴る。

“アタリ”の合図である。

しかし、今の私は、そのさらに隣に座っている男性が気になって仕方がない。


「で、最後、こいつが木下のツレの美津井。」


田端さんが、煙草を吸い終わったを指差した。




  人間パンダ―前置き から読む 
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html
  人間パンダ―6 を読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-161.html





人間パンダ―6

名前を呼ばれたそのは、ゆっくりと視線を上げた。


やや痩せ型で、少し長めの黒髪に、肌の色も浅黒く、
一重の切れ長の目が少しつり気味で、きつい印象を与える。


「・・・美津井です。よろしく。」


言葉少なに自己紹介を終えた。


涼子から蹴りの合図はない。

本日のターゲットは、木下さんにロックオンされたようだ。


私は、ドキンドキンと大きく波打つ心臓を、左手で押さえた。

は・・・。


その瞬間、私の視線に気づいたのか、
と目が合った。

慌てて視線をそらす。


しかし、私が見つめるのを止めた後も、
は、じっとこちらを見ている。

嫌な汗が、じんわり出てくるのがわかった。


はわかったのだ。

私が、の正体に気づいてしまったことを・・・。

そう、は人間じゃない。

は本当は・・・・







・・・・・パンダなのだ。








  人間パンダ―前置き から読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-155.html
  人間パンダ―7 を読む
   http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-162.html





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