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Sound of Wind Mill

思うまま 感じるまま を そのまま 言の葉や 絵の葉に のせて 気ままに 飛ばしています
奇妙な落し物-3
「・・・・・・・・」

とりあえず 人はあまりに思いがけないことが起こった場合
しばし固まる性質が あるようである。
私のそのときの状態が まさに それであった。

「なまえ・・・名前・・・」
頭の中をかけめぐるハテナマークと格闘しながら
必死に考えを整理していく。

「・・・・冗談・・か何か・・でしょうか?」
とりあえず 一番可能性のありそうな「おち」をつけてみる。

「冗談だったら よかったんですけどねぇ・・」
青年は ふっと 自嘲の笑いをもらした。
その後 長いため息をつくと 遠い目をした。


「・・・いや その・・お役にたてず・・・」
にじんでくる汗を拭きつつ 言葉を濁す。
なんで あのとき 声をかけてしまったんだろう。
私は 足を止めたことを 思いっきり後悔していた。
そのまま通り過ぎていれば こんな おかしな人と関わることもなかったのに。


「落し物をした僕に気づいて 声をかけてくれたあなたなら と思ったんですがねぇ・・」
青年は 遠い目のまま 少々がっかりした様子で 鞄を抱え直した。

「信じてもらえないんじゃ しょうがないですよね」

青年は いったん背筋を伸ばすと
再び 電信柱の辺りを探し始めた。
「所詮 落とした人間にしか わからないものですから。
 期待をする方が 非常識というもんだ」


「・・・・・・・」
まさに そのとおり
期待する方が 非常識である。
しかし、こうも厭世的なものの言い方をされると
こちらとしても 黙ってはいられない。

「じゃあ、お聞きしますが
 あなたが 名前を落としたって証拠は 一体どこにあるんですか?!」

さあ、これでもう 答えられまい。
心の中で にんまり してやったりである。

すると
いけしゃあしゃあと 青年は答えた。

「では、あなた
 僕の名前 わかりますか?
 わからないでしょう?
 ほら やっぱり 僕の名前 行方不明じゃないですか」



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