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Sound of Wind Mill

思うまま 感じるまま を そのまま 言の葉や 絵の葉に のせて 気ままに 飛ばしています
奇妙な落し物-7

再び沈黙が訪れた。


「・・・・・・」


最初に沈黙を破ったのは 巡査だった。

「・・・とりあえず 落し物なんですよねぇ」
と言って、引き出しから 書類とボールペンを取り出す。

青年に それらを手渡しながら
記入するように促した。


青年は ボールペンのフタをとると
書類に記入しようとした。

記入しようとした。

記入しようとした。

したものの 最初の欄で ペンが止まる。


「 氏 名 」


そもそも これが記入できた時点で
この書類に用は無い。

巡査もそのことに気づいたのか
あわてて書類を回収する。


再び沈黙が広がる。


「困りましたねぇ」

巡査がため息をもらす。

やはり 交番でも どうにもならなかったか。


そうなることは 薄々わかってはいたものの
私の目的は そこにはない。

「では そういうことで 後はよろしくお願いします」

やっかいごとを押し付ける相手が見つかった以上
長居は無用である。

笑顔で巡査に会釈し
パイプ椅子から腰を浮かす。

困惑した表情で見返す巡査。
申し訳ないとは思うが
これ以上ややこしいことに 巻き込まれることは御免だ。
目線をそらすと
睨みつけてくる青年が見えた。
見捨てる気か とでも言いたいのだろう。


「あなたは 名前を落とされた現場を見ていらっしゃるんですよね?」

巡査が尋ねた。

「あ・・はい。」

「では、現場を検証するのに立ち会っていただけますね?」

巡査は、年を重ねた皺をさらに深くして にっこり微笑んだ。



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