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Sound of Wind Mill

思うまま 感じるまま を そのまま 言の葉や 絵の葉に のせて 気ままに 飛ばしています
奇妙な落し物-13
しばし 人と犬が睨み合う。

「返してくれ!」「ウウゥウウ・・・」

張り詰めた長い時間が流れる。


どのくらいの時間が流れただろうか。
そのうち ふっと 青年が目をそらした。

勝負はついたようだ。

「どうしても返す気はないそうだ」
青年は吐き捨てるように言った。


「これからどうすりゃいいんだ・・・
 名前がないんじゃ 就職活動はおろか漫画喫茶すら入れねー・・・」

たしかに 名前がないと
書類関係は全滅 ありとあらゆる取り決めができなくなり
自己紹介もできず
社会生活が壊滅状態となる。


「はぁ~・・・」
青年はこの世が終わったかのようなため息をつく
が必ずしも あたらずといえども遠からずである。

青年はズボンが汚れるのもかまわず その場に座り込んだ。
「どうしたらいいんだよ・・・・」
伏せた顔から雫が落ちる。

「・・・・・・・」
私も巡査も 言葉をかけられずにいる。


「おにいちゃん かわいそう・・・」
少女が 沈黙を破った。

タイチを抱いたまま近づいてくる。

「・・・・・」

少女は、座り込んだまま顔をあげられずにいる青年に向かって言った。

「お兄ちゃん 名前がないんでしょ
 だったら・・・・ 
 ・・・・タイチを貸してあげるよ!」

青年は涙で汚れた顔をようやく上げた。



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