Sound of Wind Mill

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奇妙な落し物-14

「貸すって・・・?」

みんなの視線が 少女に集中した。

少女は青年のところまで タイチを抱いて歩いてきた。
そして タイチを青年の方へ差し出した。

「ご飯と散歩のときは帰ってきてよね」

そう言うと 青年の手にタイチを抱かせた。

「これでよし!」

少女はにっこり笑った。


「え・・?・・・」

戸惑う青年と我々に 少女は言った。

「名前といつもいっしょにいれば 普通の人と変わりないでしょ?」

それでも下せない顔をする私たちに
少女はしょうがないなという表情で タイチを抱いた青年の前に立った。

「お兄ちゃん 名前は?」

「芝野 太一・・・」

「あぁ!!」

本人も含めて私たちは驚いた。

青年が名前を名乗っている!!

少女は得意そうに笑った。


「俺の名前だ・・・・」

青年の目からは再び涙が零れ落ちた。


外はすでに夕焼け色に染まっていた。
私たちの影が長くのびる。

芝野 太一は これから夜の餌(夜ご飯)らしく
少女について行くという。

「いろいろ ありがとうございました」

と我々に一言言うと 青年はタイチを抱いたまま頭を下げた。

「いえいえ」


名前とはいつも一緒にいてこそ名前として機能するのか・・・
しかし 名前にリードをつけて常に抱いてなくてはいけないのは大変だな・・・
とはいっても 名前がないのに比べたら 天と地ほどの差がある
など いろいろ考えながら 犬を抱いた青年と少女の後姿を見送る。

同じく二人と一匹の後姿を見送った巡査と目が合った。

「いやぁ 大変な目に遭いましたなぁ
 交番勤務上 初めての事件ですよ」

「いやぁ 奇妙な出来事があるもんですなぁ」

「そろそろ 我々も帰るとしますか」

「そうですね。 では」

本当に今日は疲れた。早く帰って一風呂あびよう。


「あの」

帰りかけたところを巡査に呼び止められた。

「すみません。 せっかくなのでお名前だけでも」

「あぁ、はい」

巡査の差し出したメモ帳に 名前を書き付けようとしたとたん
頭が真っ白になった。

これは もしや・・・・


夏の夕暮れは 黄昏を越えて夜にさしかかろうとしていた。

夏には奇妙な出来事がよく起こるという。
奇妙な落し物も然り。


                   <完>


→奇妙な落し物を最初から読む http://oneofwing.blog70.fc2.com/blog-entry-29.html


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